日本を代表する食べ物として今では世界中に広がり、大人気となっている『すし』。
『寿司』『鮨』『鮓』など、色々な漢字で書かれていることを皆さんはご存知ですか?
実は“すし”の漢字表記に決まりはなく、全国各地の業界団体や店ごとでも、見事にバラバラの漢字を使っているのです。
大きく分けると西日本では『鮓』、東日本では『鮨』を使うことが多いようですが、それはなぜなのか、今回は“すし”の歴史を紐解いていきましょう。
鮓
最初に使われるようになったのは『鮓』という漢字でした。それはすしの起源に関係しているのです。
もともと「すし」は“魚を塩で漬け込み自然発酵させた保存食”のことで、元は魚だけでしたが、のちに発酵を早めるためにご飯を一緒に漬けるようになり「熟鮓(なれずし)」と呼ばれていました。
今でも食べられている鮒鮓(ふなずし)のようにすっぱいもので、魚へんに酢っぱいと書いて『鮓』という漢字が使われていました。
ふなずしの有名な滋賀をはじめ西日本で歴史が古く、今でも西日本を中心に多く使われています。
鮨
次に使われるようになったのが『鮨』という漢字です。もともとは中国で“魚の塩辛”という意味で使われていた漢字で、日本に伝わってからは「なれずし」以外のすしに用いられることが多かったようです。
このころには「江戸前ずし」が食べられるようになっており、いわゆる「握りずし」や「押しずし」を表す漢字として使われていました。現在でも「江戸前鮨」が一般的で、「江戸前鮓」という表記はあまりされないようです。
この『鮨』という漢字は「江戸前ずし」発祥の東日本を中心に多く用いられてきました。
寿司
さらに時代が進んで幕末や明治時代のころになると、献上物や祝い事でも“すし”が食べられるようになりました。縁起の良い当て字として、“寿を司る”や祝い言葉の“寿詞”を表す『寿司』という漢字が使われるようになったということです。また『寿司』という漢字は、『鮓』や『鮨』のように魚へんが使われていないことから、「ちらし寿司」や「巻き寿司」、「いなり寿司」などどんなすしにも使いやすく、その後も全国で広く使われるようになっていきました。
まとめ
“すし”の漢字は、縁起の良い『寿司』、鮮魚を握る江戸前ずしの『鮨』、なれずしの『鮓』とおおまかに分類されていることがわかりました。現在、国内のすし店のうち最も多い表記は『寿司』、続いて『鮨』、最後に『鮓』となっています。
たしかに私たちが思い浮かべる“すし”の漢字は『寿司』ではないでしょうか?
字面が良く、看板に用いても目を引くことや、「いなりずし」など魚を使っていない“すし”にも使えること、また色々なネタを扱っている回転寿司などにも使いやすいことから、今では多くのすし店が使用しているのでしょう。
形を変え、漢字を変え受け継がれてきた“すし”はやはり日本を代表する食べ物で間違いないですね。
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